「残業代はない」という合意の効力

相談を受けていると、相談者が勤務する会社では、何らの細工もなく、ただ単に残業代の支払いが行われていないというケースに遭遇することがあります。

採用時に「残業代はない」と告げられている場合などでは、労働者の側も「残業代はない」と聞いて了承して入っていることから、残業代請求はできないものと信じていたりします。

 

しかし、法定の時間外労働に対する割増賃金の支払義務は、労働基準法37条によって(法定の除外事由に該当しない限り)当然に発生します。労働基準法は労働条件の最低基準を定めるものであり、同法の定める基準を下回る合意は無効となり、無効となった部分は同法の定める基準によって補充されるからです(同法13条)。

つまり、「残業代はない」という合意が成立していたとしても、その合意は無効であり、労働者の残業代請求が、その合意の効力によって妨げられることはありません。

 

1人でも多くの労働者が正しい法律知識を身に付けて残業代請求を行うことにより、違法な残業代の不払い(及びこれに伴う長時間労働)が社会から一層されることを願ってやみません。